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加速時はリアタイヤが「右往左往」! カレラRSR 2.1ターボ 935/78 GT1 911を3台乗り比べ(3)

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加速時はリアタイヤが「右往左往」! カレラRSR 2.1ターボ 935/78 GT1 911を3台乗り比べ(3)

水冷の3.2L水平対向6気筒ツインターボ

ポルシェ935/78は早々に引退したが、911 ターボの開発は止まらなかった。市販車では、四輪駆動の959が登場し、911は964型へ進化。そして1998年に登場したのが、1990年代半ばに復活した国際スポーツカーレースへ焦点を合わせた、911 GT1だ。

【画像】「スピード抑制」から生まれた高速ポルシェ カレラRSR 2.1ターボ 935/78 GT1 917Kと718も 全128枚

ファクトリーチームとして、トップカテゴリーでの勝利から遠のいていた当時のポルシェは、トヨタやメルセデス・ベンツと伍するには有能なGT1マシンが必要だと判断。ヘルベルト・アンフェラー氏の指揮のもと、1995年に開発がスタートしている。

実戦投入は1996年から始まったが、1998年仕様では大幅な刷新が図られた。レギュレーションを解読しつつ、技術者はゼロから再設計。ホモロゲーション・マシンとして、レーシングカーから派生した極めて高性能なロードカーも、1台製作された。

ミドシップ・シャシーは、ポルシェとして初となる、カーボンファイバー製モノコック。ブレーキディスクには、カーボンセラミックを採用した。コンピュータを活用し、カーボン製ボディの空力特性も入念に煮詰められた。

新しいモノコックの中央に載ったのは、プロトタイプ・レーサーのポルシェ962由来となる、水冷の3.2L水平対向6気筒ツインターボ。かくして、1998年のル・マン24時間レースへの準備が整えられた。

R390 GT1とF1 GTRを抑え1-2フィニッシュ

予選では、メルセデス・ベンツCLK-LMとトヨタGT-ワンが快走。ポールポジションを前者が、セカンドポジションを後者が掴んだ。911 GT1は、4番手と5番手からのスタートとなった。

とはいえ、本戦は甘くない。2台のCLK-LMは、ウォーターポンプの故障でリタイア。GT-ワンは、トランスミッションの不調で姿を消した。

2台の911 GT1は堅調に周回を重ね、日産R390 GT1とマクラーレンF1 GTRを抑え、1-2フィニッシュ。ポルシェとして16回目となるル・マンでの総合優勝と、最後となったGT1クラスでの優勝という、見事な記録を勝ち取っている。

以降、ポルシェはしばらくル・マン24時間レースから姿を消すが、市販車の911は993型から996型へモデルチェンジ。異論を呼んだ水冷エンジンではあったが、勝利が販売を後押ししたことは間違いない。

実際のところ、911 GT1と996型の911で、共通点が多かったわけではない。涙目のヘッドライトを備えるが、他に同じ部品といえたのは、テールライトとドアハンドル程度。ガルウイングドアを開くと、カーボン製モノコックが姿を現す。

コクピットは狭く、運転席からの視界は限定的。右手には、6速シーケンシャル・マニュアルのシフトレバーが突き出ている。ロードカーも作られたとはいえ、間違いなく本格的なプロトタイプレーサーだ。ルーフは低く、ドライバー交代は手間取っただろう。

躍動的で動物的 リアタイヤが右往左往

ステアリングホイールはモモ。ハーネスを締めたドライビングポジションは、現代のル・マン・ハイパーカーとも異なる。スタイリングはモダンだが、サーキットを走り出すと、素晴らしいアナログマシンだということが見えてくる。

935/78「モビー・ディック」より、フラット6ツインターボが発揮する最高出力は200馬力以上低い。それでも、911 GT1は躍動的で動物的。右足を深く傾けるたびに、トラクションの足りないリアタイヤが右往左往する。

トランスミッションはシーケンシャルながら、現代のユニットとは異なり、変速時にクラッチペダルを踏む必要がある。ブレーキの効きは唐突で、ヒール&トウしにくい。

タイミング良く、エンジンの回転数を合わせられると気持ち良い。ところが一歩間違うと、太いリアタイヤはロックしてしまう。

それでも、フロントノーズはステアリングホイールの細かな入力へ逐一反応。フラットなアンダーボディと、巨大なディフューザー、そびえ立つGTウイングは、頼もしいダウンフォースを生成する。

4000rpmから6500rpmの間のパンチ力は、内臓へ響くほど強烈。病みつきになる体験だ。筆者のスキルでは不可能だとわかっていても、超貴重な911 GT1の限界がどこまで高いのか、探りたい気持ちになってしまう。

モータースポーツで醸成された技術の浸透

911 カレラRSR 2.1ターボの登場から50年。サーキットで圧倒的な速さを披露したレーシングカーたちが、ブランドの名声を勝ち取ってきた。そこで培われたターボ技術は、より速く扱いやすい、エキサイティングな公道用モデルへと展開されてきた。

既に現行の992型911では、ターボを名乗らないカレラでも、ターボチャージャーを搭載している。モータースポーツで醸成してきた技術が、半世紀をかけて、ポルシェの隅々まで浸透していったことは間違いない。

協力:ポルシェ・ミュージアム・アーカイブ、イェンス・トーナー氏
撮影:マーク・リッチョーニ
画像提供:ポルシェ

ポルシェ911のターボ・レーサー 3台のスペック

ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボ(1974年)

全長:4235mm
全幅:2000mm
全高:1320mm
最高速度:304km/h
0-97km/h加速:3.2秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:828kg
パワートレイン:水平対向6気筒2142cc ターボチャージャー SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:500ps/7600rpm
最大トルク:56.9kg-m/5400rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

ポルシェ911 935/78(1978年)

全長:4890mm
全幅:1990mm
全高:1200mm
最高速度:366km/h
0-97km/h加速:2.6秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1025kg
パワートレイン:水平対向6気筒3211cc ツイン・ターボチャージャー DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:857ps/8200rpm
最大トルク:79.7kg-m/6600rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

ポルシェ911 GT1(1998年)

全長:4925mm
全幅:1990mm
全高:1140mm
最高速度:310km/h
0-97km/h加速:2.6秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:950kg
パワートレイン:水平対向6気筒3164cc ツイン・ターボチャージャー DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:549ps/7200rpm
最大トルク:64.1kg-m/5000rpm
トランスミッション:6速シーケンシャル・マニュアル(後輪駆動)

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みんなのコメント

1件
  • f(ふ
    ロードカーを持っている人の話しだとタイヤサイズが特殊で(今は可能になったが以前は)交換出来なくて困っていた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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